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Zero Energy Greenhouse

将来の、子供たちのために。
それは、地球と共に歩むミライの農業。

ZEGってなに?-about-

ZEGは、ネット・ゼロ・エネルギー・グリーンハウス(Net Zero Energy Greenhouse)の事。
農産物を生産しても、化石燃料由来の電力や燃料などエネルギーを消費しない様にする、新しいカタチの施設園芸です。これにより、地球温暖化の原因となるGHG(温室効果ガス)の排出をゼロにし、今の豊かな生活環境を維持したまま、持続可能な社会を実現します。
エネルギー消費を減らし、一方で施設および近隣でエネルギーを創出することで、これを実現します。

ZEGとは、エネルギーを消費しない様にし、エネルギーを創出する

どうしてZEGが必要なの?

日本政府も、世界の各国も、およそ2050年を目標に、脱炭素化・カーボンニュートラル社会を実現しようとしています。でも、農業や施設栽培で脱炭素化が必要なのでしょうか。

農業でのGHG排出量は、全体の1/4

「農業は、CO2を吸収する植物を生産しているから、環境に優しいのでは?」
多くの方は、農業の地球温暖化への影響をこう見ているでしょう。しかし、実際には違うのです。
世界のGHG(温室効果ガス:Greenhouse Gas)排出量は、490億トン相当(CO2換算)。
このうち24%は、農林水産業で排出されていると推測されているのです。

GHG排出量
出典:IPCC AR5 第3作業部会報告書 図:SPM.2
図 世界の部門別のGHG排出量

日本での農林水産業のエネルギー消費は3.4%

目線を変えて、エネルギー消費量で、農業を見てみましょう。
日本全体でのエネルギー消費は7,483PJあります(令和3年)。
このうち、農林水産業が消費するエネルギー量は、なんと3.4%の256PJに上ります。
少ないように見えますが、1産業1%が目安といわれるエネルギー消費量で、3%越えというのは、比率としては多いのです。さらに、農林水産業は、省エネ化が遅れているのです。

エネルギー消費の推移
【第212-1-1】企業・事業所他部門のエネルギー消費の推移
出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」を基に作成
※「総合エネルギー統計」では、1990年度以降、数値の算出方法が変更されている。
非エネルギー利用分については、1990年度以降は各業種の消費量の内数となっている。

施設園芸でのエネルギー消費は、1%を超えている

冬でもトマトやイチゴを食べられるのは、温室やビニルハウスなど栽培施設で、エネルギーを使って植物を育てているから。
でも、こういった施設は、寒い冬でも植物が育つように、外より温度を高くなるよう暖房しています。脱炭素化のため「暖房をしなければいいじゃないか」、という考えもあるでしょう。
でも、今まで食べられたモノが食べられなくなるのは、我慢することになりますし、栄養バランスの面でも良くありません。
脱炭素化社会になっても、今までと同じように、食料を生産できる能力が必要なのです。

エネルギー排出量グラフ
出典:IPCC AR5 第3作業部会報告書 図:SPM.2

そこでZEGの出番

温室のエネルギー消費のほとんどは、暖房などの熱源です。
しかも、燃焼式の暖房機がほとんどで、CO2を直接排出しています。
また、農産物は日々消費する食料ですので、安価に皆様に供給されています。このため、栽培施設はなるべく安価に建てられていて、断熱性は住宅ほど高くありません。
次の「ZEGの開発」で示す技術で省エネ化を実現し、脱炭素型農業を実現しようとしています。

ZEGの開発-development-

ZEGの開発

1施設園芸用ヒートポンプ

ヒートポンプは、一般家庭のエアコンと同じ仕組みですが、“ポンプ”と名がつく通り、熱を輸送する事ができます。
ですが、今まで施設園芸では積極的には使用されていません。コスト以外にも、デフロスト問題があるためです。空気から熱を得る「空気熱源」方式が現在主流ですが、冬に暖房運転すると、室外機が氷結しやすくなります。これを防ぐために霜取り運転機能(デフロスト)が働いて暖房機能が止まるためです。
これを解決するのが、水熱源ヒートポンプです。農地には、浅井戸や用水路など、水を得やすいです。水は空気よりも熱量が多く、デフロストを起こす心配もありません。

施設園芸用ヒートポンプ
図:新開発の水熱源ヒートポンプ
この図の装置は、地下水を利用した地中熱熱源で動作する例
水熱源ヒートポンプ(新型HP)と、空気熱源ヒートポンプとの運転の差
図:水熱源ヒートポンプ(新型HP)と、空気熱源ヒートポンプとの運転の差
※HP:ヒートポンプ

2波長選択型フィルム(新カーテン素材)

夏は窓越しでも、太陽の光は熱く感じます。逆に、冬の夜空は寒く感じ、カーテンを引くと和らぎます。これは、光のうち熱を伝える“長波”の光がガラスを通じて、出入りしているからです。冬は、“放射冷却”という言葉をよく聞くようになりますが、これは熱が宇宙に逃げる現象です。
夏など暑い時期、太陽光のうち、熱さ原因の“長波”が入らなければ、温度が上がりにくくなります。冬場、熱が宇宙に逃げなければ、より少ないエネルギーで温度を維持できます。
これを実現するのが「波長選択型フィルム」です。
従来の素材と異なり、必要な光は通し、不要な光は効率的に反射できるようになりました。これは、ナノ技術による多層膜で実現しています。

  • 波長選択型フィルム(新カーテン素材)
    図:波長選択型フィルムの構造
  • 波長選択型フィルムの効果
    図:波長選択型フィルムの効果
    ※カーテン下のデータは、拡散光の影響が含まれている。
    PAR:光合成有効放射 NIR:近赤外

3EMS機能も備えた環境制御システム

エネルギー消費を低くするには、どうすれば良いでしょうか?
「エネルギーを使用しなければ良いのなら、機器を動かさなければ良いのでは?」。
正解です。でも、不正解です。
省エネのために「猛暑だけど、エアコン止めてください」と言われたら、どうしますか?ほとんどの方は、我慢する省エネ化は、嫌だと感じると思います。
農業は産業です。国民、市民の皆様に、安定した食料を供給する、重要な役割があります。質の良い作物を安定して供給するには、エネルギーを使う必要があるのです。
消費エネルギーを減らす一方で、品質や生産性は維持もしくは増やす。一見すると矛盾する問題を解決していくのが、EMS機能を備えた環境制御システムであるGEMS(Greenhouse Energy Management System)の役割なのです。

EMS機能も備えた環境制御システム GEMSの構成
図:GEMSの構成

4センサーネットワークおよび情報流通法

ZEGを実現するたには、施設内の様々な情報を収集できた方が、より効果を発揮します。
例えば人間の五感は、触覚は皮膚1cmあたり100個、嗅覚は26,000個、視覚は1億個もあるとされます。栽培施設は、施設あたり温度や湿度、CO2濃度などのセンサが、1~2点あるのが一般的です。
より多くのセンサを備え、より多くのデータを得て、その得られたデータを有効活用する仕組みを用意する。これも我々プロジェクトの重要な課題です。我々は、IEEEのP2992WGとも連携し、これらの問題を解決していきます。

センサーネットワークおよび情報流通法
図:安価なセンサを工夫し、データ密度を上げる

5小型電動ロボット(協調作業ロボット)

労働力の代替だけでなく、施設内情報の効率的な収集に威力を発揮するのが、小型電動ロボットです。昨今のロボット技術の発展により、不整地であっても、人間と協働できるロボットが実現できるようになりました。

小型電動ロボット(協調作業ロボット)
図:追従機能付き小型電動ロボット

6ZEGの体系化

どこまでをZEGと言うのか、どこまで設備を整えればZEGになるのか、ZEGの運用はどうすればいいのか・・・
今まで存在しなかったZEGを設計し、整備し、運用するには、様々な場所や作物・作型に合わせて、検証が必要になります。ですが、多様な栽培施設に合わせて、都度、テストを行うには費用も時間もかかります。
そこで我々は、ZEGシミュレータを用意し、ZEGの構築や導入の改善(PDCA)を早く迅速に進められる体制を用意しています。

ZEGシミュレータ(開発中の画面)
図:ZEGシミュレータ(開発中の画面)

ZEGの実証

栽培に役立てる様に

経済栽培(生産現場での栽培活動)ですぐに役立てるように、以下の4種類の作物を栽培して、作物の製品性やエネルギー投入効果を検証しています。

  • トマト

    トマト

  • キュウリ

    キュウリ

  • ラン(コチョウラン)

    ラン
    (コチョウラン)

  • イチゴ

    イチゴ

ZEGを構成する機器は、エネルギー消費を最適化するだけでなく、作物の品質向上や、栽培可能時期を延ばせる力もあるため、これらの可能性についても検証を進めています。

ZEG向け商品・
サービス-service-

ZEGを導入するための、製品やサービスについては、現在開発中になります。
ご紹介できる段階になりましたら、公開致します。

ZEGプロジェクトについて-project-

ZEGは、複数の研究・実証プロジェクトで開発を進めています。

環境省「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」

課題名「施設園芸の脱炭素化に資するゼロエネルギーグリーンハウス(ZEG)の開発・実証」(2022~2024年度)
このZEG開発の中心的なプロジェクトになります。技術開発を担う6機関と、実証を担う4機関の、合計10機関11部署が本課題に取り組んでいます。

代表実施機関

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)
農村工学研究部門 / 農業機械研究部門

共同実施機関

事業担当・予算配分機関

環境省 地球環境局

関連プロジェクトNEDO先導研究プログラム/
エネルギー・環境新技術先導研究プログラム

事業名「農山漁村地域のRE100に資するVEMSの開発」(P14004:2021~2022年度)
農村地域のエネルギー融通や有効活用により、RE(再生可能エネルギー)100%を実現するための必要要素を探る研究を行いました。
この研究の中で、ZEGの実現性を探り、環境省実証事業へとつながりました。

NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム

代表実施機関

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)

共同実施機関

三菱電機株式会社開発本部、千葉エコ・エネルギー株式会社、ジオシステム株式会社、ホルトプラン合同会社、国立研究開発法人産業技術総合研究所、慶應義塾大学理工学部、早稲田大学理工学術院、東京大学生産技術研究所、京都大学工学研究科

予算配分機関

NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)

関連プロジェクト農林水産省/委託プロジェクト研究

課題名「脱炭素型農業実現のためのパイロット研究プロジェクト」(JPJ009819:2021~2025年度)
既設の栽培施設でも有効活用できる脱炭素化技術の研究と実証に取り組んでいます。ZEGプロジェクトでも用いている水熱源ヒートポンプ研究の他に、小規模施設向けの再エネ利用システムの実験・実証などを通じて、ZEGの適用範囲の裾野を広げる役割も担います。

農林水産省 委託プロジェクト研究

代表実施機関

代表実施機関: 国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)

共同実施機関

栃木県いちご研究所、ネポン株式会社、ホルトプラン合同会社、慶應義塾大学理工学部、早稲田大学理工学術院

予算配分機関

農林水産省

ZEGについての
お問い合わせ-contact-

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後ほど、メールで折り返しご連絡させていただきます。

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環境省「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」
課題「施設園芸の脱炭素化に資するゼロエネルギーグリーンハウス(ZEG)の開発・実証」
プロジェクト事務局:ホルトプラン合同会社 (担当:林・渡邊)